この一冊・本誕生のドラマ

他の本

●エドゥアルド・トロハの構造デザイン

●水辺から都市を読む

●日本の伝統的都市空間

 

 

「実測術」
陣内秀信・中山繁信編著 企画・編集:南風舎 発行:学芸出版社 

●「とうとう宮脇さんも亡くなってしまったけど、「デザインサーベイ」の図面 が残っているんだよな。

あれがなんとかならないかなあ」…それは宮脇ゼミOBのこんな会話から始まった。

「デザインサーベイ」…それは、約30年前、当時法政大学の講師として、学生を動員して、

約10年、全国の興味深い集落を徹底的に実測しまくったものだ。

倉敷から始まって毎年一ヶ所、馬籠、五箇荘、琴平、稗田、室津と主なものが6ヶ所。

中でも圧巻は「琴平」、幅1メートル、長さ4メートル、参道の克明な平面 や断面の実測図だ。

それをなんとか本にしたい、しかし当時は、明大、芸大など他の大学でも盛んにやっていた。

「やるんなら、みんなまとめてやろうよ」「そんなに簡単に出版できるものか」。

「調査の過程が重要なんで、結果の図面 はクソみたいなもんだ」。

など議論百出。こんな論争が何度も繰り返された。

●●ついに、その前段として、調査の実態を明らかにしよう、と決まる。

ついては、現在もっとも盛んに実測調査を展開している

法政大学の陣内先生に協力をお願いし、協働作業にしよう、と決まった。

内容は、陣内ゼミ、宮脇ゼミともに実測に参加した人の中から、

調査地ごとに代表者を選び、調査の実態、狙い、楽しさを書いてもらう。

なにしろ、30年の開きがある。宮脇ゼミは全て這いずりまわってメジャーで測り、図面 も全て手書き、

ところが陣内研は、距離も光学式の「ピッキョリ」という最新兵器。図面 はコンピューターのCADだ。

陣内研の若者からみると、宮脇ゼミの図面 は「絵」にしか見えない。

この差を浮き彫りにするのも興味深いじゃないか…。

●●●ところが、進めるに従って、難問続出。調査に参加したメンバーのだれもが

体験も豊かでエピソードも面白い反面 、 自己主張が強く、じつに個性的な自由人だ。

編集者としては、やりがいもあるが、実に骨のおれる相手だ。

とはいっても、紆余曲折の末、なんとか1年かけてまとまった。

できてみると、実測調査のノウハウがぎっしり詰まった、実に貴重な本になった。

というより、都市や建築の見方やつきあい方を教えてくれる、楽しいガイドブックだ。

なにしろ、調査に参加した一人一人の大変な努力、苦労の結晶なのだ。

「実測術」の出版元、学芸出版のホームページにも詳しい紹介がある。

●●●●ところで、宮脇ゼミの「デザインサーベイ」の全図面 は現在鋭意編集中。

中央公論美術出版から、折り込みを駆使したA3判で、2003年2月発行予定です。

書名は「日本の伝統的都市空間」。御期待ください。

●●●●●なお、「デザインサーベイ」の図面 は宮脇ゼミのホームページでも公開されている。